こんばんは、kottsunです。
今回は、六本木・森美術館で現在開かれている企画展、、、
「Chim↑Pom展:ハッピースプリング 森美術館」2022.2.18-5.29
に行ってきました。
現代アートとして多くの社会情勢を作品に落とし込み、
多くの映像作品などを生み出してきたChim↑Pomの、これまでの作品を一挙に集めた大規模個展です。
Chim↑Pom(チン↑ポム)とは何か、、、
Chim↑Pomは2005年8月に結成された6人組のアーティスト集団。
メンバーは、
卯城竜太さん(リーダー)1977年東京都出身
エリィさん(フロントガール)唯一の女性メンバー彼女が起点となる作品も多い 1983年
林靖高さん
水野俊紀さん
岡田将孝さん
稲岡求さん
各メンバー個人個人が海外などでも活躍しているアーティストたちです。
エリィさんは、ファッション界にもファンが多く、インフルエンサー的な存在と言える方です。
それぞれのプロフィールはなかなか出てきませんでした。
SNSをやっている方も少なく、芸術家として楽しんでいる感じなのでしょうか?
マスコミや世間からは「悪ふざけ」「アートじゃない」などのバッシングを受けることもしばしばのグループですが、目に見えるもの以外にも目を向けてみると、着想やアイデアの根源を深く考えるきっかけになる作品を創作しているように思います。
アートが突きつける現実と問題提起
今回の展覧会の名前は「ハッピースプリング」
その名のように、カラフルなロビーから始まり、現代アートの中でもポップな展示なのかと思いながら中へと進みました。
(お恥ずかしいもので無知なままではなく、勉強した状態で見に行きたかったと今では感じています。)
スタートからチンポム代表作である「スーパーラット」(代表作だと、後々知りました、、、)
渋谷のゴミ捨て場を蹴りながら、ネズミをあぶりだし、捕まえまくっている動画作品。
最初は「?」と、この人たちはただの酔っぱらいで悪ふざけをしているのか?と思ってしまいました。
捕まえたネズミをはく製にしている作品なのですが、これがまた実にデカい!
ネズミってこんなにデカいのか。。。こんなにたくさんいるのか。。。
はく製になるだけでこんなに可愛いキャラクターになってしまうのか。
これにはどんな思いや構想があるのだろうか。。。
分からない。
次に進もう。。。
という感じで進んでしまいましたが、ネズミがこれだけいるってことは食べ物が多く捨てられているということでもありますよね。
それでいて、ネズミの多さに驚き、その繁殖力の強さも覗えます。
でも何より、ネズミの生きざまが飢餓を表しているのか、貪欲さもあれば、純粋に生きることに懸命なところも見えるような気がします。でも、ネズミが持つ菌は時には人を殺めてきたことも忘れてはならず、それが社会問題となっていた時代から、今は別の点で社会問題が浮かび上がっているのではないかとも考えさせられました。
そして、回覧展をじっくりとめぐり、
一通り回ってみると、難しく考えすぎて頭が痛い。疲れた。。。という気分でした。
現代アートの中にある問題提起と、社会的背景に対する吐き出した気持ち。
今では歴史となった、過去の悲劇を今に呼び起こし、広く伝え、残す作品の数々もありました。
見えないものを突然見せてきたり、すべて見えなくしてしまっているのにそれが作品になっていたり。。。
訳わからないまま終わった気もします。
多分、私は「世間」の側なんだと思いました。
というのも、エリィさんは、過去のインタビューの中で
『— 2008年には、「日本のアートは10年遅れている」というタイトルの個展を行いましたね。アートを見る人たちの目が、日本では特に遅れていると、今でも感じますか?
というか、世界でも遅れていると思う。ほとんどの人たちがクソみたいなパンピーで、なにも知らないでいるし、なにも思わずに暮らしてる。だから日本は世界に比べてもっと遅れているけど、他の国だって遅れていると思う。
— アートと呼び名がついた途端に、なんだか難しいものと感じる人も多いかと思います。そういった人たちがアートを身近に感じられるようになる方法はあると思いますか?
う~ん。そういう人たちはアートというよりも、デザインとかを見てアートを感じたと勘違いして楽しんでいればいいんじゃないかな。』
引用:https://fashionpost.jp/portraits/61115
と話しています。
まさに私はクソみたいなパンピーでデザインを楽しんでいる一人なんだな~。泣
それでも考える葦でありたい。
そして、クソみたいなパンピーは今回の個展を回り、
3分の2は意味不明で終わり、
3分の0.5は体験型で楽しみ、
3分の0.5は考える葦となり、社会情勢に憂鬱になりました。
ポップで軽やかになるというより、世の中のダークな部分に心が引きずられた感じがします。
過去の問題作「広島の空にピカッ」
Chim↑Pomは過去、広島での個展を開く際に、合わせて作った作品が物議を醸しました。
個展開催の直前に、チャーターした小型飛行機で飛行機雲を作り、広島県上空に原爆を想起させる「ピカッ」という文字を描いたものを撮影した作品を作っていました。
結果的には、これが地元の方々からバッシングの的となり、翌日には謝罪会見を行うことになり、しかも個展開催も中止になってしまったのです。
目撃した市民や被爆者から「不快だ」「気味が悪い」との声が上がった。というのも納得してしまうようなケースかもしれません。
原爆を意味する「ピカ」は、被爆者にとっては日々の暮らしを暗転させられた言葉でもあり、原爆を表す漫画の効果音としても、ピカッ!と表現するようになり、当時からこの言葉が刷り込まれてしまっているのだと思います。
それを重々承知の上で、なぜ傷をえぐるような作品を作ったのでしょうか?
そもそも「ピカッ」は、原爆に対してリアリティーを持てないという若者の現実を表したものではないでしょうか。
戦争を知らない世代が親となり、祖父母となる現在において、原爆経験者とその関係者と東京などの遠隔地かつ当時を知らない若者が同じように知識を持ち、同じように感じ取ることは出来ないのではないでしょうか。
そこには大きな壁があり、考えることすらしない若者も多いと思います。
そこに、一石を投じる意味があったのかもしれません。
ですが、その結果は、制作日の3日後には被爆者団体を前に謝罪会見を開くことになってしまったのです。
リーダーの卯城(うしろ)竜太さんは「被爆者に不快な思いをせたのなら申し訳ないが、一般社会とアートにはギャップがある。それが表面化したときに議論したいと考えていた。しかし、一面的に捉えられ、議論の余地のない数日間だった」と振り返っていたそうです。
一般社会とアートにはギャップがある。
つまりは、アートはあくまでも表現であり、現実に起こりえた事象ではないということでしょうか。
ただ、表現によっても感情は動かされますから、そこからあふれ出てきた感情が表面化したときに、それを議論することで、過去を今に呼び起こし、未来につないでいこうとしたのかもしれません。
この一件の後、リーダーの卯城さんは、被爆者関係者の方と密にかかわりを持ち、被害者団体から理解を得て、関係を築くことができたのだそうです。
それはきっと、見える部分だけでなく、考えや想いといった見えない部分も伝えることで、見えるようにしたからなのかもしれません。
敵ではなく、思いを共にする存在なのだと伝える行為だったのだと思います。
私たちはこの作品をきっかけにしてもいいですし、事件をきっかけにしてもいいと思います。
相手を尊重した議論をすることで、より深く知る必要があるのかもしれません。。。
隠れエロキテルを探せ。。。
社会的情勢や問題を深く考えるきっかけとなる作品としては、イギリスにて行った作品企画
「A Drop of Pandemic」も興味深いと思いました。
コレラ感染に対して、感染数が抑えられていたのがビール工場だったことから、生水の煮沸消毒や、下水設備の整備がコレラをなくすために必要だったと分かったことをポイントにした企画でした。
現地でビールを飲んだ現地の方が排出した尿などを原料に作ったレンガを町の建物修復用建材として使う取り組みをしていたそうです。
こうした、社会的問題に対してまじめに取り組む?企画もあれば、
社会問題を皮肉るような、おちょくった切り口の作品もあり面白かったことも魅力でした。
その中でも、体験型作品で、エロキテル6号機という作品があるのですが、これはとある感情を利用した新エネルギーを、電気へと変換する装置にした作品でした。
この作品、実は観客参加型の作品となっており、皆さんがお持ちのスマートフォンで楽しむことができるのです。
楽しみ方は簡単。
会場内にあるエロキテル宛の携帯電話番号に掛けるだけ。
私は少し不安もあったので「184(いやよ)」をつけて非通知で電話しました。
電話すると、作品説明に書かれている
「広告を見てかけてきた電話の着信がライトを光らせる仕組みになっています。」
の通り、目の前の街灯や、育てる道にある街灯にも?光が灯りました。
自分が動かしているんだという感覚は美術館の中では楽しい経験でした。
(184-090‐●●●●ー▲▲▲▲のように、184をつけると非通知になります。)
そして、もう一つ楽しめるのがこの広告シールが会場内のいたるところに貼られ、隠れミ〇キーを探しているように探しながら楽しむこともできるところです。
たくさん貼られているので、すぐ見つかると思いますが、「ここにも!?」と思わず探してしまう楽しみがありました。
さぁ、あなたはいくつ見つけられるでしょうか?
これも作品?足元に注意!
道を作ることがテーマとなっていたり、都市の中での
・アスファルトジャングル
・ゴミ
・大量消費、経済活動
その他都市だからこそ起こりやすい社会問題を取り上げている点も多くありました。
まさか、これも作品なの?
と思ってしまうような所にごく自然に、当たり前のようにそこに存在し、時にはつまずいたり・蹴っ飛ばしたりしてしまいそうなものもありました。
どこまでが作品で、何がアートと現実なのか境界があいまいなところも面白さと難しさだと思いました。
※鶴の後は特に足元に注意してくださいね。実際つまずいている方も見かけました。。。
現実とアートにはギャップがあると卯城さんは話していましたが、そのギャップを少なくして、身近な生活の中にアートが入り込んでくる感じがしました。
「ビルバーガー」という作品で感じたことと、現実は近しいのかもしれません。
安定しているように見えて実はアンバランスなことは世の中にたくさんあると思います。
社会問題がそのギャップの中に生まれてしまうことや、ビルドの前やその土台にはクラッシュとトラッシュ(ゴミ)が生まれることも目を向けなければいけない、崩れそうなバランスなのだと思いました。
併せていきたい共同開催展
六本木森美術館で最初に展示されている「スーパーラット」はそこにあるもので全てではなく、そこから30分ほど移動した、虎ノ門駅で「共同プロジェクトスペース」として開設された場所で展示されているのだそうです。
森美術館で受付を行っています。予約制となりますのでご注意ください。
この他に、4月27日に「Chim↑Pom from Smappa!Group」に改名することを発表しており、改名日の4月27日から品川区のアートギャラリー「アノマリー(ANOMALY)」で展覧会を開催。
4月30日~墨田区のアートギャラリー無人島プロダクションで回顧展も開催予定となっています。
六本木森美術館は5月29日まで開催予定ですので、併せて楽しみたいところです。
おわりに
今回、Chim↑Pomを知らずに行った展覧会でしたが、現代社会をもう一度深く考えるきっかけと、自由なアートの作品を楽しむことができました。
難しく考えず、感じるままに楽しむことも、とことん深く考える楽しみ方もあると思います。
子どもには刺激が強い物もあったかもしれませんが、お絵かきコーナー、マンホールの中など子供が興味を惹かれるような遊び心のある作品やスペースがあって、家族でも楽しめるのではないかと思いました。
託児所もある今回の企画展では、なかなか美術館に行けなかった小さいお子さんのいるご家庭でも、少しの時間でも集中してアートを楽しめる場所となっています。
是非、足を運んでみていただきたいと思いました。